多くの日本人が「中国=危険」だと思っています。中国に留学すると言ったら親に大反対されたという人も少なくありません。
では本当に中国は治安が悪いのでしょうか? データで検証してみましょう。
国際連合(国連)で不正薬物や犯罪についての対応、調査を行っている国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime、UNODC)という組織があり、世界中の犯罪についての統計を毎年発表しています。
その統計で発表された、2012年の中国と日本の人口10万人あたりの殺人、強盗、強姦事件の発生件数は次の通りです。
残念ながら中国は殺人についてのデータしか公表していませんが、これを見る限り日本より治安が悪いということができます。
それよりも注目して欲しいのは中国以外の国の犯罪発生率です。次の表は同じ国連薬物犯罪事務所の統計で発表された世界の主要国の犯罪発生率です。
アメリカは銃社会ですしマスコミによる事件報道も多いですので、治安の悪さも予想は付きます。
しかし、イギリスやフランス、オーストラリアも殺人事件の発生率が日本の数倍だとみなさんは思っていたでしょうか。カナダやニュージーランドなどはむしろ日本と同様に安全だと良いイメージを持っていたのではないでしょうか?
ですが事実はそうではないのです。カナダもニュージーランドも殺人事件の発生率は日本の数倍です。カナダの強盗の発生率は日本の25倍以上、ニュージーランドの強姦の発生率は日本の30倍。決して日本と同様に治安の良い国ではないのです。
そして、中国の殺人の発生率はニュージーランドとほぼ同じです。ニュージーランドに留学に行くと言って、危ないからやめといたら?という日本人は皆無でしょう。なのに、中国に留学に行くと言ったら誰もが心配する。ナンセンスだと思いませんか?
みなさんが中国は治安が悪いと思う理由、原因は間違いなくマスコミ報道です。行ったこともない、住んだこともない国に対して、テレビや新聞でネガティブな報道が繰り返されると不安になるのも仕方ないでしょう。
ですがそれでもなお、日本人は無防備にマスコミ報道を信用しすぎです。テレビ局も新聞社も民間企業であり、報道は収益を上げるための企業活動であること。テレビ局員も新聞記者も会社員であり、大前提として会社の利益のために取材、報道を行っているという当たり前の事実をよく知るべきです。
世の中には数多くの事実があります。ですがマスコミがそれらの事実すべてを報道するわけではありません。マスコミが報道するのは数ある事実の中の、会社の収益につながる事実です。つまり、多くの事実の中から視聴率と販売部数のアップにつながる事実だけを選んで報道しているのです。
2012年に北京で起こった反日デモをマスコミは大きく報じました。2万人が参加したという報道は間違いなく事実です。ですが、2千万人の北京市民の内、残りの1,998万人はデモに参加しなかった。デモに参加したのは北京市民の0.1%だけだったというのも事実です。ですがこの事実をマスコミは一切報じていません。
なぜならば、「今日の北京は1千人に1人しかデモに参加せず、残りの999人はいつも通りの暮らしをした平和な北京でした」なんて報じたら誰もテレビを見ないからです。それよりも1千人の中のたった1人が日本大使館の前で日の丸を燃やしている写真を一面トップに載せたほうが新聞は売れるからです。
「中国=危険」と思い込んでいる方々には、自分がマスコミの商業主義にまんまと引っかかっていることに気付いていただきたいと思います。
では、実際の中国の治安はどうなのかというと、日本より悪いのは事実です。ですが、普通に留学生活を過ごして危険な目に遭うというほど治安が悪いわけではありません。
もちろん中国は日本ではありません。世界でも異常なまでに治安が良い日本の外で暮らすわけですから、日本にいる時と同じようにノー天気で無防備に過ごすわけにはいきません。常にある程度の警戒心は必要です。
また、日本に比べてスリは非常に多いですので、後ろポケットに財布や携帯電話を入れて歩かない、リュックは背負うのではなく前で抱えるなど、最低限の対策は取るのが当然です。
ですがそういう警戒心を持った上で中国で普通に留学生活を過ごすのであれば、中国の治安は日本と大きくは異なりません。
ただしそれは、何も気にせず安心して暮らして良いという意味ではありません。深夜の盛り場の裏通りを若い女性が一人で歩いていると危ないのは東京も北京も同じです。普通に留学生活を過ごしている限り、「中国は日本並みに安全で、日本並みに危険」だと考えてください。